日本初の監察医研修制度実現

平成16年2月定例会 議案質疑
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渡辺ひでと

第十款警察費第二項警察活動費第一目警察活動費に関係して質問いたします。

愛知県警が、殺人、傷害致死などの事件性のあるものはもちろんですが、
こうした犯罪死でなくとも、孤独死を初めとして変死体として扱う死体数は、
平成6年に3,236体であったものが平成15年には5004体となっており、
この間も経年とともにふえ続け、当面同様の傾向が続くと思われます。

変死体というのは、病院や自宅などで亡くなる場合や交通事故など
明らかに死因が病死や事故が原因であることがはっきりしているもの以外の、
自殺、孤独死などの不自然な状態で死ぬことを指します。

もちろん、発見状況や死者本人の病歴などから、
死因が通常死と判断された場合には解剖されることはありませんが、

他殺など犯罪死の疑いがある場合には解剖されることになります。

その解剖数は、ここ数年を見ても127体から148体にとどまっています。

しかし、高齢化と核家族化の一段の進展や凶悪事件の増加などの社会的要因を背景として、
孤独死、殺人などで変死体数がふえることが予想されます。

通常、変死体の発見後、警察署の霊安室や自宅などに運び込んだ上で検視を行い、
その段階で医師に検案、つまり事件性があるなしの判断を仰いだ上で、
その疑いのあるものが解剖に回されると聞き及んでいます。

そこでまず、遺体を検案するまでに保管する場所について伺います。
県下では、表面的には地域バランスをとる形で遺体保冷庫が四警察署にあります。
冬などの寒い時期は、警察署の霊安室に遺体を運ぶことで腐乱しにくくなるようですが、
梅雨や夏の暑い時期などでは腐乱しやすい状況となると推測されます。
この状況で将来的にも十分に活動しやすい設備状況であるのか、伺っておきます。

さて、この医師による検案については、都市により実際の取り扱いに大きな違いがあるものの、
東京都内23区を初め、大阪市、神戸市、横浜市、名古屋市において監察医制度が活用されてきました。

監察医制度とは、第二次大戦後間もないころ、
東京を初めとして大きな都市ではおびただしい人が食糧不足や栄養失調などから道端などで
餓死したり病死したりしたことから、その原因の究明とその後の対策をもくろんでつくられたと言われます。

その後も引き続き監察医が中心となって変死体の検案を行ってきましたが、
検案の担い手については、この大都市の事例のように監察医が行ったり、
警察署の被留置者などの健康管理を担当する警察医が行ったり、
また、開業医や地域の拠点病院の医師などがこれに当たってきました。

しかし、高齢社会の進展や診療報酬点数の見直しなどで、医師が活動の場を広げたり、
深夜の検視に当たる活動には体力的に影響を及ぼしたりすることなどから、都市やその周辺を中心に、
なかなか検視の引き受け手が見つけにくくなっているという状況を十分認識しておくべきだと思います。

近年の各都市の状況を見ると、東京都23区では常勤監察医が9名おり、非常勤も43名の体制で、
死体取り扱い数1万5千件ほどのうち3分の2を監察医で検案しています。

ほとんど非常勤しかいない
大阪府、神戸市、横浜市でも取り扱い数の2割から4割程度を監察医が検案しています。

一方、名古屋市では10名の非常勤監察医がいるものの、ほとんど活用されず、
平成15年には、警察が変死体として取り扱った死体数が約1800体もあるにもかかわらず、
検案数はわずかに13体しかなく、そのすべてが解剖に回されているのが現状です。

そこでまず質問いたしますが、
他都市に比べて名古屋市における実質的な監察医の稼働状況が低く、
当面監察医で賄われる傾向であるとも受け取れます。

市民病院などの地域の拠点病院であれば、
医師の勤務の実情に合わせて時間的な融通がきくことにもなり、

開業医に比べて検案にも対処しやすいようにも思われます。

今後は、おのおのの立場を踏まえて、うまく混在させる手法が求められていると思います。
今後の対応を伺っておきます。

ところで、変死体を検案するには法医学の知識が必要であるとされていますが、
開業医や勤務医を問わず臨床を中心として活動することから、
その専門性に全幅の信頼を置くことが好ましいのか疑問に思います。

警察の検視官が事件性を疑う死因においても、
検案に当たる医師が病死などによる通常死と判断する場合もあると聞き及んでいるからです。

もちろん、こうした場合でも、疑わしきは調べるという基本から、
検視官の意見が尊重されて司法解剖されることは申し上げるまでもありません。

しかし、他県の事例であるように、変死体を一たんは通常死とした事案が、
実は身内による殺人事件であったという場合もあります。

しかも、犯人が自首したことで明るみに出たといいますから、
自首しなければ事件にならずに片づけられたことになります。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

医師といえば一定の見識を持っていることから、専門外でもある程度の見立てはできます。

しかし、必ずしもみずからの専門分野のようには明るくないとされる上、日ごろ法医学には興味はなく、
ほとんど臨床経験しかない医師が、
主として活動する専門分野と異なる部位を診るケースも多いと言われます。

事件性を帯びた事案であれば初動期の素早い対応が重要ですが、
そのためには法医学に明るい医師もしくは専門的活動をする人材を育てることが必要だと思います。

現実には医師免許を取得した人は、同じ時間を費やすのであれば、
死亡後の法医学よりも生命を救う医療活動に従事することを望んでいると思います。

さらに、我が国では監察医制度自体の存廃が問われているとも聞き及んでいますが、
核家族化が進み、犯罪事案も極めて多いアメリカでは、
医師ではないものの法医学への専門性の高い人材を育て、登用しているコロナー制度があります。

コロナーと呼ばれる検視官は、ドクター刑事とも言われているようですが、
死に際して医師が立ち会えなかった死の現場を医学的見地からその死因を徹底的に究明すると言われます。

我が国では、検視に当たる事案の多くは、実態的には警察が担当しているものの、
建前上、検視は検察側が対応できないときに、
委託を受ける形で警察側がこれに対処すると聞き及んでいます。

そこで質問です。
医師の活動が大きく変化している現在、都市部においては、
いつまでも検視に際し検案の役割を臨床の医師に求めるのは難しくなると思います。

県警は昨年より体制の充実を図っており、新年度においてもさらに充実すると伺っていますが、
今後も県警独自にさらに専門性の高い検視官の育成に努める必要があると思います。
その方針について伺います。

また、国に対しても、
今日の社会的背景をとらえて諸制度のあり方を見直すことを求めるべきであると思います。
検視、検案の現状についての認識と、中期的、長期的視野での今後のあり方について答弁を求めて、
質問を終わります。


警察本部長(和田康敬)

まず、変死体の取り扱いに関する御質問のうち、遺体の保管場所についてでございますけれども、
霊安室につきましては、空港警察署以外の全警察署にはございますが、
遺体の保冷庫というのは、議員お示しございましたように、県下に四施設しかございません。
これでは十分ではございませんので、今後、この整備を図ってまいりたいというふうに考えております。

それから次に、変死体の検案につい てでございますけれども、
監察医による検案が東京や大阪に比べて名古屋の場合非常に少ないというのは、
まさにそのとおりでございます。

またこれは、東京、大阪の監察医については、
常勤あるいは非常勤にしても専門の医師が委嘱をされておるんでございますが、
愛知県の場合につきましては、大学の法医学教室の教 授などに委嘱をいたしておりまして、
結局、監察医解剖する遺体だけの検案で、
他の検視等の立ち会いについては要請をしていないからでございます。

したがいまして、変死体の検視をする場合の立ち会いについては、
開業医の方でありますとか、
あるいはその病院へ勤務しているお医者さんにお願いをしておるわけですけれども、
ただなかなかこれも患者さんの診察があるということで、
なかなかこの確保というのは難しいものですから、
えてして留置人の健康診断をお 願いしております警察医の方に、
どうしてもほかに先生がいない場合にお願いをしてしまうということがございまして、
休日でありましたり夜間であったりして、
大変そういう意味では申しわけないなというふうに感じております。

それで、開業医の方に昼間に検視の立ち会いをお願いすると、
中には、やはり患者さんの診察を待っていただいて検視の方に来ていただくこともありますので、
議員御指摘にございましたように、
公立病院などのお医者さんにもう少しお願いできないかどうかということで、
ちょっと努力をしてまいりたいというふうに考えております。

それから、検視官制度でございますけれども、
これは刑事課長等を経験した幹部警察官の中から選抜をしております。

もともと殺人等のそういう犯罪による死体の検視はもちろんでございますけれども、
犯罪によるかどうか非常に微妙な死体については必ず臨場して検視をさせておりますし、
それから解剖の立ち会いをする、
いわば検視のプロ、エキスパートというふうに位置づけております。

それで、この選抜をした者を東京の警察大学校に研修に行かせまして、
法医学の研修でありますとか、あるいは東京大学とか慶応大学の医学部の法医学教室における
いろんな解剖への立ち会いとか、約70日間の研修をした者をこれに充てております。

現在、検視官4名ほどおりますが、この4月から体制を充実して、
検視官を5名と、それからその補助者を5名、計10名の体制にいたしまして、
一層検視の適正化を図ってまいりたいというふうに考えております。

それで、非常に変死体の扱いが多くなっております。
やはり犯罪死であるのに事故死と見まがうことのないようにもしなきゃいけませんし、
また、死因については、やっぱり御遺族の方、本当の死因は何なのかということについて、
御遺族の方々の最大の関心事でもございますし、
また、公衆衛生上か らもその死因の究明というのは必要だろうというふうに考えております。

そういった意味から、監察医の充実というのができないものかどうかということもございますし、
それから、現在愛知県では検視の嘱託医というのを設けておらないものですから、
これについて、検視嘱託医の制度というものを何とか やってまいりたいとも思いますし、
それから、場合によってはその地区で輪番でやっていただけないかと、
こういったことについてちょっと検討しております。

いずれにしても、いろいろ、お医者さんのことでありますので、
地元の医師会でありますとか県の関係の当局とも相談して
進めてまいりたいというふうに考えております。

【動き】
この質問をきっかけに、監察医充実に向けて愛知県警が動きました。
日本で初めての監察医研修制度創設されたと聞いています。

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